メタバーズ(仮想空間)とリアリティ(現実)

20211028日、Facebookの社名が「Meta」になりました。
FacebookInstagramOculusを提供している「Facebook」が社名を新しく変更したのです。
同時に、マーク・ザッカーバーグ氏は、社名変更に伴い、メタバースの構築を推してゆくビジョンを語っています。下記の動画は、日本語の字幕も出るので、ぜひ視聴して見てください。

今回は、現実世界とは違う人間として、バーチャル空間で生活するというのがメタバーズの本質だと仮定して、バーチャル世界が現実の記憶に置き換わってしまう怖さについて、少し考えてみたいと思います。

メタバーズ(仮想空間)とリアリティ(現実)

The Metaverse and How We’ll Build It Together — Connect 2021

先日のマーク・ザッカーバーグ氏の基調講演について簡単にまとめてみます。

動画では、仮想空間上でコミュニケーションする様子が紹介され、教育、エンタメ、ゲーム、フィットネス、仕事、eコマースなど、さまざまな分野でのメタバースで実現できる世界観と可能性を提示しています。

どこまで、どのタイミングで実現できるのかは不明瞭ではありますが、社名を変更してことからも本気度が伺えます。

メタバーズという世界を作り上げることには、莫大なコストと工数を要するものなのですが、VRの映像クオリティやオンラインゲームでの世界観の実現性を考えると遠くない未来に、動画で紹介されている世界は実現できるように感じます。

ムーンショット型研究開発制度とは

次に、メタバーズが実現する可能性について考えるために、日本国内の話をします。

ムーンショット型研究開発制度についてご存知でしょうか。

内閣府のページに詳しく掲載されている政府が主導している取り組みで、人々の幸福(Human Well-being)を実現するために、その基盤となる社会・環境・経済の課題を解決するためのイノベーションの創出を目指した活動です。

ムーンショット目標1には、『 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現』と、その目標が掲げられています。

この人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会こそが、まさにバーチャル空間で生きるメタバーズを示しているのです。

目標として、誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤の整備を掲げており、サイバネティック・アバター生活として、2050年までに、望む人は誰でも身体的能力、認知能力及び知覚能力をトップレベルまで拡張できる技術を開発し、社会通念を踏まえた新しい生活様式を普及させる取り組みを進めています。

この世界観を実現するための技術がVR(バーチャルリアリティ)です。

簡単に、臨場感が味わえるVR映像で、人と人との不要な接触を減らしつつ、長距離移動の負担や時間に縛られることもなく、豊かな体験を得ることが可能となるのです。

バーチャル世界が現実の記憶に置き換わってしまう時

これらの遠くない未来に実現するであろう世界、メタバーズと現実の記憶について考えてみたいと思います。

人間の脳は、仮想現実に入り込んだ時、その体験がリアルであればあるほどに、その境界線があいまいになってゆきます。

VRの再現性が高くなるほどに、バーチャルリアリティの世界に没入してしまい、VRの中で体験したことが過去にあった現実の記憶として脳にメモリーされてゆく事になるのです。

仮想空間から、現実に戻ってきたときに、現実世界のほうがバーチャル空間であるような認識を感じてしまう現象が起こるのです。

VRの世界が体験者にとって理想の世界(ユートピア)であればあるほどに、現実へ戻すことに拒否感を感じて、仮想現実の世界へ逃げ帰ってゆく衝動に襲われるのはないでしょうか?

バーチャルリアリティ技術の進化は、現実世界と仮想世界の垣根を超えることにすでに成功しており、VRによって、記憶の一部が書き変わってしまっていることがすでに起こり得ているのです。

バーチャルリアリティの世界に没入するとその境界が消失してしまい、仮想現実を体験した本人には、ただの現実でしかなくなるような錯覚を生み出してゆきます。

メタバーズは確かに仮想現実を楽しんだり、現実世界を補完する便利なものかも知れませんが、その世界が手軽に手に入るようになるほどに、仮想空間が現実世界へ与える影響力が肥大してゆくことにはある種の怖さを感じます。