人工知能は、妖刀村正になってしまうのか?

村正は、凄まじい斬れ味で知られており、妖刀村正として知れれている日本刀です。

今回は、人工知能が普及してゆく時代に、人工知能が妖刀村正になってしまう可能性について考えてみたいと思います。

日本刀、村正と正宗の作風上の差異

日本刀、村正と正宗の作風上の差異について簡単説明します。

江戸時代に、村正という刀が徳川将軍家に災いをもたらす呪いの刀だという噂が広まり、妖刀村正として知らせるようになりました。
倒幕の象徴として西郷隆盛ら志士に愛用されていたことや、歌舞伎の演目籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)などにも登場することもあり認知度が高い日本刀です。

一方で、正宗は、相州伝と称される作風を確立し、多くの弟子を育成したことで知られています。相州伝の特徴は、硬軟の鉄を混ぜ合せて鍛え、高温で焼くことにより、地肌美しく、刃紋が大きくなることであり、それまでの刀と比べて見た目にも立派で美しい物になり高い評価を得るようになりました。特に、正宗は、鍛冶職人の技術が高度であるため、現在でも製造するのが難しいと言われています。

村正が妖刀と呼ばれるのは何故か?

村正と正宗はそれぞれ異なる時代に活躍したのですが、それぞれの特徴から、面白いエピソードを耳にすることがあります。

村正と貞宗(正宗の弟子)は、同じ師匠の正宗で刀工としての腕を磨いていました。ある日、師匠は村正と正宗の刀を評価することにしました。まず、村正の刀をせせらぎの中央に刃を川上に向けて刺しました。川上から1枚の木の葉を流すと、流れてきた木の葉は村正の刀の刃に触れるとすーっと何も抵抗もなく綺麗に切れました。次に、正宗の刀を同じようにせせらぎの中央に川上に刃を向けて刺しました。川上から1枚の木の葉を流すと、流れてきた木の葉は正宗の刀の刃に触れるとそこでピタリと止まりました。そこで、刀を引き上げると引っかかっていた木の葉が綺麗に切れたという話です。

こんな逸話から、村正の刀は人の意によらずして斬れてしまう妖刀であり、正宗の刀は人の意に従って斬れた名刀であると評価されることなったというのです。

人工知能は、村正の妖刀のようになるのか?

村正の刀は、鞘を抜くとその切れ味を試したくなる、そうした魅力がある刀であるとも言われています。

正宗の刀は、斬ろうという意志がなければ、人を斬ることはできない、まさに武士の魂を持った刀であり、そういう魅力があると言うのです。

斬ろうとしなくても切れてしまう刀と斬ろうとしなければ切れない刀。

武器としての性能では、村正の刀の方が優れています。

正宗の刀には、哲学があります。

人工知能が普及してゆく時代に、AIは製品としての性能だけではなく、哲学を持ち得ている製品やサービスがより求められてゆくはずです。

この違いを生み出して行けるのが人間にしかできない仕事になるのではないでしょうか?