情緒的価値と人工知能の関係性について考えてみる

情緒的価値と機能的価値とは

機能的価値と情緒的価値とは、どういう価値を示す言葉でしょうか。
機能的価値というのは、製品やサービスそのものが持つ機能や性能に対する価値であり、情緒的価値とは、製品やサービスから受ける印象などの価値のことを示します。商品を所有したり、実際に使用することで感じる喜びや誇り、ワクワク感などが情緒的価値になります。
例えば、製品のデザインや使い心地などは、情緒的価値となります。
機能的価値が必要十分な範囲で満たされていたり、飽和状態になってくると情緒的価値が注目され始めてゆきます。

情緒的価値を強烈に生み出した初代iPhone

この情緒的価値を最も強烈に表したものが、初代iPhoneでは無いでしょうか?
iPhoneは、スマートフォンという概念を生み出した発明のように思われますが、iPhoneの登場以前にも多機能な通信機能がついた小型の情報端末は存在していました。
Appleは、携帯電話と情報端末がセットになった端末を「携帯電話を再定義」として、シンプルに再定義し直したことにより、使い心地が良いスマートフォンを提供しました。
結果、その新しい体験価値は、これまでにない情緒的価値を生み出しました。
そのこだわりは、パッケージデザインや販売方法までコントロールさせた体験価値になっていました。
iPhoneは、機能的価値が著しく高かった端末を開発したのではなく、利用者の体験を細かく設定して触っていて心地よい端末を生み出したのです。めんどくさい操作マニュアルを見なくても、操作方法が直感的にわかるようにデザインしました。例えば、写真をズームアップしたければ、2本の指を広げる操作をすれば、直感的に写真がズームされます。そうした操作体験が情緒的価値を生み出してゆきました。

情緒的価値を人工知能が生み出す方法

人工知能はさまざまなジャンルで新たな価値を生み出し始めていますが、ビジネス面では、効率化やコストカットに成果を生み出していることが多いようです。
情緒的価値を人工知能が生み出す方法のヒントになるのが、Netflix (ネットフリックス) の取り組みではないでしょうか?
Netflix (ネットフリックス) では、動画のレコメンドに、AIの機械学習を導入して本当に視聴しているユーザーが見たい作品をレコメンドできるようにコントロールしている点が有名で評価されています。
より会員の嗜好性に併せた紹介をするため、動画一覧のサムネイル画像まで、個別にユーザーに合わせて表示を変更しています。
上記にとどまらず、人工知能が人がより情緒的価値を感じるようなヒットするシナリオ案を作り出すところまで、人工知能の活用は進み始めています。
人間が情緒的価値を感じるのは、どういうストーリーか、その定石パターンを提案してくれるのです。
最終的に、自動的に生み出されたストーリーには(人間が見ると)少し不自然な部分が出てきたりするので、より人間が情緒的価値を感じるように、人間の手を介してチューニングする必要がありますが、情緒的価値を感じるストーリーを人工知能は、提案することはできるのです。

情緒的価値を生み出す要素

情緒的価値を生み出す要素は、共感や愛情と言った人の感情に左右させれる要素です。人工知能と人がダイレクトに共感することは無いはずですが、共感を人間が感じるような答えを生み出すことはできるようになってきています。
残念ながら、本当の意味での共感を生み出すためには、人工知能だけでは難しく、現段階では、人間が介在してゆく必要があります。
情緒的価値を生み出すために、人が介在する必要がある理由が、情緒的価値というものは機能的価値を充実させるだけでは達成することができない価値だからです。
人が介在することで、非効率になったりする部分が逆に琴線に触れ、人間の心に共感を生み出したりすることがあるのです。
人は人にしか共感しないと言われることがあるように、人間らしさに共感を感じる部分があります。
人の不器用さや不完全さが、人間らしさという共感を生み出すことがあるので、そうした部分を意図的に生み出すのか、自然体であるが故に、共感や感動を生み出すのかは、判断が難しいところですが、意図してシナリオが作りこまえれた映画を見て、人は共感をして感情を動かされることを考えれば、人工知能がより深い情緒的価値を生み出す日もそれほど遠くないように思います。