AIとの融合を実現したピーター・スコット-モーガン博士

ピーター・スコット-モーガン(Peter Scott-Morgan)博士は、2017年、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、余命2年の宣告を受けるも、ロボット工学を修めた経験から「最先端のテクノロジーを肉体に導入すれば難病を克服する道を開けるのではないか」と考え、病を「画期的な研究を進めるための機会」とみなし、自らの身体を実験台として、”肉体のサイボーグ化”と”AIとの融合”をスタートしました。余命宣告から4年を経た2021年、日本でも新しい著書を出版したり、NHKなどの出演をこなしてます。

AIとの融合とは?

自らを実験台にサイボーグ化とAIとの融合を進めるという決断をし、ALSによって身体が機能しなくなることへ先手を打つように肉体の改造を実現している。


AIとの融合の部分に注目してみると、2019年10月、ALSの死因のひとつである誤えん性肺炎を防ぐため、喉頭を切除して気管と食道を切り離し、気管に空気供給装置を接続する手術をおこなったため声を失うことになりました。
声帯を切除前にAIへ学習させるために、自分の声で言葉やフレーズを30時間以上収録して、それをAIに学習させている。
このシステムは、目の動きによって文字を入力できる機能と連動して、AIが本人音声に近い声で話すことを実現しています。視線を動かして文字を入力する速度を上げるために、あらかじめピーター博士が発言しそうなことを予測してサポートするようにしています。
また、病気進行してゆくと表情を作ることが困難になるため、顔を3Dスキャンし、AIの音声に合わせて表情を変えるアバターを制作して、表情のある会話ができるシステムを作り上げています。

この先進的な取り組みは、サイボーグ化による難病のALS克服を実現するだけではなく、未来の人間として生きることの定義を書き換え始めています。

ピーター博士は、1984年に著書で、人類はいつの日か脆弱な肉体を 半永久的に機能する機械に置き換え、知性をスーパーコンピューターで強化することを予見しており、AIをライバルではなく パートナーにすべきだと主張し続けていました。
人類にとって最も魅力的なのは 人類と協働する 人間ありきのAIで、AIと人類が調和することで、パートナーとしてお互いに相乗効果を生み出してゆくことです。

そうした考えがある中で、AIとロボット技術は加速度的に進化しているにも関わらず、人類がその進化の波に乗り遅れ始めているようにも感じます。

AIと人間が融合することで、人類の定義が変化してゆく

AIと人間が融合することで、人類の定義が変化してゆく可能があります。

実際に喋っている映像を見るとより可能性を感じることができると思います。

テクノロジーの進化によって、人類の価値観が大きく変わってゆくことを予感されるチャレンジのように思います。

この変化を人間の進化として考えることができれば、人として生きることの可能性と誰にでも訪れる死との向き合い方が変化してゆく時代は、それほど遠い未来ではなさそうです。

人が進化をする上で、一番の障壁はテクノロジーの限界ではなく、人間の心のリミットの方が影響が大きいのではないでしょうか。