人工知能が普及するとプロパガンダが加速する恐れがあるのか?

プロパガンダとは、特定の思想や行動へ意図的に誘導するために行う情報操作のことで、個人や集団に影響を与える行為になります。本来は、政治的な意味を持った心理戦や広報活動のことを示す言葉ですが、近年は、SNSがプロパガンダに活用されるようになり、大きな問題になっています。
そうした意味で、人工知能が普及するとプロパガンダが加速する恐れがあるのでしょうか?

SNSプロパガンダとは

SNSによる情報発信は、さまざまな反響を生み出し、大きなうねりを生み出すことがあります。今まで白色だと信じられてきたことが、ある日突然、黒色に変わってしまうこともあります。
いつの間にか世の中が偏った空気に包まれる。起きていない論争をあたかも起きているかのように見せされる。本当は問題が起きていないことが、問題として提起される。テレビのニュースや新聞、週刊誌の見出しを見ている内に、問題で無いことが大きな問題のように感じることや自分自身の問題意識が変わる体験から感じることはないでしょうか?
誰かが問題だと声を上げたことに、少しずつ世の中が同調し始める。
時間の経過と共に、当初は違和感があった新しい考え方に同調する人が増え、世の中の正しい判断を作り出してゆく。
そう考えると善悪の判断すらもコントーロールされてくるのかもしれません。
一例をあげるとたった40年という期間で考えても大きな変化を生み出していることに気がつきます。40年という期間は短くはない期間ですが、Youtubeで探すことができる動画や現存する書籍などから確認ができる情報が数多く現存する期間なので設定してみました。
オンライン動画視聴サービスなどでも、当時の映画やテレビドラマなどを視聴することができるので、どのぐらい常識が違っていたかを確認することができます。
今、40代以上の人は、その常識の中で育ち、全く異なる常識に無意識の内に適応しているのです。40年前、教育現場で先生は、個人差はあるものの、必要な時に暴力を使っており、それが許容されていました。(当然、正しいことではないという認識は持っていた。)
信じ難い思想ですが、暴力は子どもを正しく導くための愛のムチになりえるという思想が残っていました。嘘ではなく、当時のヒットドラマの中でも、教師が生徒を殴るシーンが感動的な場面として登場したりもしていました。(スクールウォーズなどで確認することができます。)
そうした映像に、嫌悪感を示す人は居ましたが、許容範囲である人が大多数でした。今では、地上波でそうしたドラマを放映することは、不可能に近いことでしょう。(必ず、炎上してテレビ局にクレームが殺到することでしょう。)
そのぐらい、人間の判断基準は、自分の意思以外の影響を受けて変化してゆくのです。

携帯電話の予測変換が人工知能の恩恵を受けるとき

スマートフォンで当たり前の入力文字の予測変換は、今後は、人工知能の恩恵を大きく受けることになってくるはずです。
以前は、ユーザー自身の過去に入力した履歴を元に予測変換の候補が表示されていましたが、現在は文字列を途中まで入力した時点で、それに続く文章が候補として表示される技術が導入され始めています。
ここに便利さと同時に怖さを感じないでしょうか。ここまで予測変換が進んでゆくと、自分が本当に意図したことでない内容を選択してしまう可能性が生まれてきてしまいます。人工知能は、入力された文字の先に続く言葉を予測して表示しますが、その言葉は本当に自分自身の言葉を選んでいると言えるのでしょうか?
同じような視点でこの問題を考えると、Youtubeのおすすめ動画は、ユーザーの過去履歴の傾向と世の中のトレンドを掛け合わせておすすめの動画をレコメンドしてくれますが、その精度は驚くほど高く、おすすめ動画のサムネイルには、必ず気になる動画のタイトルが並んでいるのではないでしょうか?
最近、認知度が飛躍的に上がってきた動画に特化したソーシャルネットワーキングサービス「TikTok」においては、次々の再生される動画が閲覧するごとに自然と自分好みの動画ばかりになることが体感できるのではないでしょうか?
こうした機能に、少し怖さを感じないでしょうか?自分の意識しないところで、自分の意思決定から学習が進み、無意識の内に動画や情報が選択されて絞り込まれているのです。
また人間自身が、自動化する機械に頼るあまり、逆に人間の基本能力が衰えてゆくことも考えられます。
例えば、記憶することの必要性を求められる機会は減り始めています。ちょっとしたメモは、手書きではなくデジタル化することで、いつでも欲しい時に検索をして調べることができるようになりました。
覚えておきたいことをデジタル化して、いつでも検索できるようにしておくことで記憶力を補うことができるようになったのです。
携帯電話が普及したことにより、電話番号を記憶する必要性がなくなりました。自分自身の使っている番号ですら記憶していない人も多いのではないでしょうか。
こうした現象は、人間の能力が進化しているようにも感じますが、特定の能力は退化していることになってしまうのかもしれません。
人工知能の新しい技術が自動的に私たちの能力を補完して楽をさせてくれることは、私たちの可能性を引き出すことにつながりまが、同時に失ってゆく能力もあることを認識しておく必要があります。

人工知能とプロパガンダ

対立する両者が外から冷静に見ていると、それぞれの主張をしているだけに過ぎないことがあります。どちらが正しいかと言えば、双方の主張が正しいこともあります。
人工知能には、開発者の影響を大きく受けます。
人間の思想も、分断が存在しています。SNSが普及したことで、その分断はより強くなって現れてきています。
今、世界では、ソーシャルメディアなどを通して、世界規模の情報戦が展開されていると言えます。
そうした完全に一致することはできない思想が存在する以上、人工知能が普及した時に大きな影響力を持つことを理解しておく必要があるのです。