映画『BLUE GIANT』を観て、人工知能について考えたこと

映画『BLUE GAIANT』は、2013年からビッグコミックにて連載の「音が聞こえてくる漫画」と話題であった石塚真一先生の作品がアニメ化された映画で、主人公の高校生、宮本大がサックスで世界一のジャズプレーヤーを目指すストーリーです。本作の劇中の楽曲を手掛けたのは、グラミー賞受賞歴のあるジャズピアニスト上原ひろみさんです。彼女のアルバム「ALIVE」が大好きな私としては、魅力的すぎるキャスティングで、劇中のピアノ演奏まで、上原ひろみさんがプレイしているとなれば、映画館に鑑賞に行くしかありませんでした。本作品は、とにかく映画館で鑑賞した方の評価が著しく高いのですが、劇中の音楽に、ジャズファンが聴いても感動するレベルの本物の楽曲と演奏が使われているからではないでしょうか。人は、本物に触れた時に、説明できない衝動的な感動に包まれてる瞬間があります。程度の違いはあるかも知れませんが、映画館という限られた空間で、集中して音量のある本物の演奏を聴くことができる体験は、ライブコンサートに近い体験になるのでないでしょうか?今回の記事では、ネタバレになる内容は書かないようにしますので、少しでも興味を持ったら、ぜひ映画館で鑑賞してみてください。(きっと、ネット配信で見るときは、ヘッドフォン必須ですね。)

天才ピアニストの沢辺雪祈と上原ひろみさん

劇中で、主人公の大が、東京で出会う天才ピアニストの沢辺雪祈の演奏を上原ひろみさんがプレイしているのですが、上原さん自身も原作のファンで、「自分の頭の中に鳴っていたその音を、本当に再現できる日が来るなんて感無量です。ありったけの情熱を込めて、この漫画の音を鳴らしたい」とコメントしていることからも作品への深い愛情を感じることができます。上原さんの存在を感じる部分は数多くありつつも、演奏をこの作品の沢辺雪祈に合わせてきていることに少し感動してしまった部分はあります。(沢辺雪祈なら、こういう音出すだろうなと試行錯誤して作られてた音なんだと思います。)劇中の楽曲は、YoutubeのHiromi Official Channel や音楽ストリーミングサービスでの配信も始まっているのですが、視聴する毎に、発見がある素晴らしい楽曲です。

ジャズは感情の音楽、感情の全てを載せた演奏

そんな、映画『BLUE GAIANT』を観て、人工知能について考えたことがあるので、少しまとめてみようと思います。まず、本作品の楽曲は完璧と言えるほどの出来ばえなのですが、作画については、色々な意見が出ています。原作が「音が聞こえてくる漫画」と評価させるぐらい気合いの入った作画であるので、ここは本当に難しいところなのだと思います。ただ、その評価を耳にした時に感じたのが、人間が生み出す本物を無意識のうちに、人間は判断して、その価値を感じることができるんだなと思いました。気合いの入った作画の持つ迫力に人は圧倒させるし、描かれていない部分には想像を膨らませて自分の世界での解釈を深めてゆきます。おそらくは、この映画を通じて、初めて、本格的なジャズ演奏を聴く機会に触れることになった人も自己解釈で期待値の上がった音楽を実際に耳にした場合であっても、その音楽に心を動かされたのではないでしょうか。ジャズは感情の音楽だと言われるように、主人公たちも感情の全てを載せて演奏をします。その情熱がそのまま乗り移ったような劇中の演奏は、心を揺さぶるはずです。

人工知能は、人間の模倣でしかないのか?

人工知能が、人間の模倣を、高度なレベルでしたとしても、この違いを埋めることはできないのではないでしょうか?世界的なジャズプレイヤーの模倣された演奏は、聴く人を圧倒すると思いますし、かなり高度なレベルで再現することは可能になるでしょう。素人には聞き分けが難しいほど、高度に再現されるのかもしれません。しかしながら、本物のジャズプレイヤーの演奏は、そうした模倣レベルの演奏とは、説明できないレベルでの違いを生み出して、人々を感動させるでしょう。人間は、魂の叫びとも言えるような感情を音に乗せることができますが、人工知能は、感情を持っていないので、音に感情を乗せることはできません。その違いを、人間は無意識のうちに、聞き分けることができるのです。Chat GPTなど、使い方では、人間以上のパフォーマンスを発揮する人工知能が実際に多くの人に使われ始めており、人間ができることは、人工知能で代替えできてしまうのではないかを考えてしまうことがありますが、感情という解釈の難しい存在があるために、人工知能は、人間の模倣でしかないと評価させる部分はあります。