映画『ポッド・ジェネレーション』の描き出す未来に、人工知能は何を生み出しているのか考えてみる。

映画『ポッド・ジェネレーション』は、人工知能が発達した近未来のニューヨークを舞台に、持ち運び可能な卵型のポッド(人工子宮)で赤ちゃんを育てることを選択したカップルの変化を描いた作品です。

ハイテク企業に勤める妻と自然な妊娠を望む植物学者の夫のやり取りをコミカルなタッチで描いているが、どこかリアリティのあるテーマに引き込まれます。

主人公は、会社から、ポッド(人工子宮)を利用することで、キャリアを諦めずに子どもを作ることに支援金をだすことが提案されます。当然、自然な妊娠を望む夫とは衝突をします。

この近未来の世界は、どこか現在社会で起こっている問題を思い出す部分があり、これからの未来に、人工知能やテクノロジーが何を生み出してゆくのかを考えさせられました。

未来のテクノロジーは、人類をあらゆる面で手助けしてくれてますが、それがどのような影響を人間に与えるのか考える必要があります。

あらゆるテクノロジーは、利便性と同時に、新たな問題やリスクを生み出すものです。

自然の仕組みは、完璧なほど、バランスが整っています。意思を持って、そのバランスを崩すことができるのは、人間だけです。

便利さと引き換えに失うものが大きいことは人間は気が付いていますが、豊かになった生活を手放すことは難しい選択になります。

本作品では、テクノロジーが進化した未来に、自然が人を癒す役割を果たしている描写が多く、リアルな自然が貴重なものとなっています。現在社会においても身近に自然がない場合には、観葉植物などをお金を払って手に入れていますが、人間は本能的に自然とのつながりを求めるものであり、その傾向はより強くなってゆくはずです。

本作の脚本・監督を務めたソフィー・バーセス氏も、インタビュー記事で、17世紀の哲学者バールーフ・デ・スピノザ氏が、『人間が自然をコントロールしようとすればするほど、自分たちがコントロールされることになる』と語っています。

魅力的なAI技術「AIセラピスト」

作品中では、AIエージェントが日常生活をサポート自然こなしてゆきます。

朝起きてから朝食を食べて、洋服を選ぶこともAIがサポートしてくれるだけではなく、体調や気分までの把握していて、ストレスを解消するサービスまでおすすめしてくれます。
ちょっと笑えるのが、感謝の気持ちを伝えないとスネてしまうこと。こうした人間ぽい不完全さを残しておくことがコミュニケーションでは大事なのかなと感じました。

自分がとても興味をもったのが、目玉の形をしたAIセラピストです。作品中では、AIセラピストに相談することは、「自然なこと」だと定義されています。

ポッド(人工子宮)で赤ちゃんを育てることと比較して、「自然なこと」だと表現されていることに驚きながらも、ChatGPTと自然なディスカッションが出来るようになったことを考えると、妙にリアリティを感じたサービスでした。

世の中には、プライバシーを守りながら自分の問題を一緒に考えてくれる存在がほしいと考える人は多いはずです。

感情は定量的に把握することが非常に難しいので、人工知能にセラピーは難しいと考えてられてきましたが、判断するためのデータ量が膨大になってくると感情を理解することはできなくても感情を分類分けすることはできるようになってきます。

コミュニケーションも対応方法をケーススタディとして大量に学習することによって、人間が判断するよりも正確で適切な判断を行うことが出来るようになるはずです。

AIを人類の集合知と定義することが出来るようになれば、感情を持たないAIの方が正しい判断を戻すことが出来るようになるのではないでしょうか。

感情の影響を受けてしまう人間よりも、客観性を持って、相談できるAIセラピストは、「普通」の存在になるのかも知れません。