人工知能の利用体験を設計するための着眼点とは

人工知能に命を吹き込む作業

人工知能と人を繋ぐ、ユーザー体験の設計は、人工知能を発展させるために、重要な役回りになってきています。この作業は、人工知能に命を吹き込む作業だと言えるかもしれません。

人工知能のユーザー体験を考えた場合、ユーザーが人工知能と対話すること、つまり「会話すること」が第一のインターフェイスになりうるのではないでしょうか。
その場合、人工知能のユーザー体験の設計は、AIとの会話の設計と対話するキャラクターの設定で決まってきます。
こうした会話の設計は、チャットで会話するやりとりの設定となりますが、蓄積された過去の会話データから最適な文面を選び出す際には、回答の次に続く会話のやりとりを予測しながら回答することで、その後の会話が続くように工夫することができます。
これは、正しい返答を出すことよりも会話できる回答を返すことに重点をおいた設計です。
このように、会話を促すためには回答への余白が必要であり、余白を設定することで、次の会話を自然に行うことができるため、こうした仕掛けがあることで会話している人は、人工知能に人らしさを感じるようになります。

人工知能とのユーザー体験の設計は、心理分析でもある。

人工知能とのユーザー体験は、会話できる余白を残した回答を戻すことに重点をおいた設計である必要がありますが、それは、人間の心理分析だとも言えます。
人がどのように認識して行動するのか、その行動の原理原則から考えて行く必要があります。
人は、他の人の発言を情報処理する時に、数多くの処理を同時に行っています。人間は、文面では同じ発言であっても、その微妙なニュアンスの違いを感じ取る力を持っていると言われているように、声の大きさ、文脈だけではなく、声色や裏に隠れる感情をも読み取ってゆきます。
例えば、同じ言葉であっても耳にした言葉をどう解釈するかは個人に委ねられている訳で、人によって、伝わる意味合いも大きく変化して行くのです。
人が入力した文章を人工知能が分析して感情を判断することができるようになってきました。文章にどんな単語を使い、言葉づかいをしているかによって、入力した人間の感情や心理状態を判定することができるのです。
そうしたやりとりの反応からも感情を読み解き、反応の結果を蓄積してゆきます。当初は空気が読めない対応を繰り返していたAIが、一定期間の学習を経ると空気が読める対応をし始めるようになります。その対応制度は、平均的な人間よりも優れた対応をしてくれる場合もあります。
心理分析を行いコミュニケーションの質を向上させることで、人間がAIと会話していて心地よいと感じるようになるとより会話に深みが生まれてゆきます。
聞くことが上手な人は、話し上手と言われるように、自分の話を真摯に受け止めて聞き入ってくれる存在を人は頼りにしてゆきます。人間以上に聞き上手なAIに親近感を抱くようになった時、人工知能がなくてはならない存在になるかも知れません。
同時に、人間は余白を残した部分を勝手に想像する力が備わっています。相手の求めているものを先回りして想像できる人は、気が効く人だと評価されます。
相手が求めているものを先回りして想像できるようなユーザー体験を生み出せる人工知能が求めれています。

人工知能への技術的な制約が創造力を活性化させる。

人工知能の利用体験を設計する際に注意すべきポイントは、いかに制約をかけて、制約の範囲内でできることの検討を進めるかに掛かっています。
自由度が高すぎると本質的な部分が曖昧になってしまいます。制約があることで、より本質的な部分へアプローチすることが可能になります。
新たな発想や手法を生み出す時には、制約があった方が創造力が活性化されると言われています。
制約があることにより、最も効果的な選択をする必要があり、実行するまでにアイディアを練り上げることが求めれます。
何も制約がないままに、進めてしまうと自由度が高すぎて、収集がつかなくなったり、無駄が多く本質からずれてしまうことも多くあります。
人工知能は、万能な機能があるように錯覚してしまうことがありますが、人工知能の技術的な制約が作り手の創造力をより活性化させることにつながるはずです。