人工知能にも弱さや曖昧さが求められる未来

人工知能は、将来的に心を持つのでしょうか?

人工知能は、人間を映し出す鏡だとも言われています。
『人工知能は、将来的に心を持つのか?』このテーマは多くの人が関心があるテーマですが、そもそも、心とは、なにか?についても不明瞭な部分が多いのではないでしょうか。
私たち自身も、人間の心のメカニズムを完全に理解しているわけではありません。そのメカニズムが解き明かされたとき、初めて人工知能にも、心を持てせることができるようになるのではないでしょうか。人間が何か判断を下そうとした時、私たちの心は、感情の影響を深く受けています。
感情の影響力について学びを深めるため、人工知能(AI)の未来を考えると共に心理学についても学びを深める必要があるのではないでしょうか。

人の暗黙知を学習する人工知能

例えば、FRONTEO者が開発した「KIBIT」は、テキスト解析において、キーワードだけに頼らず、専門家や勘の優れた人が備える“暗黙知”を再現できるのが特徴のAIソリューションです。従来のテキストマイニングなどの技術と異なり、独自の学習アルゴリズムを用いていることで、人間の機微を学習できる人工知能として、テキスト情報から意味を読み取り、人の暗黙知や感覚を学ぶことで、人に代わって、判断や情報の選び方を再現することができるようになります。
このように機械的に、人間の判断基準を理解することができるようになりますが、不確定要素である感情を理解することも加味しなければ、人間らしい判断にならないかも知れません。行動経済学の視点で見ても、人間は感情の影響を大きく受けて行動を選択してしまうため、必ずしも合理的な判断ができません。行動経済学は、経済学と心理学が融合し、人間が直感や感情によってどのような判断をし、その結果、市場や人々の幸福度にどのような影響を及ぼしているのかを探求する学問です。
私たちの日常は、経済活動の中で過ごされています、そうした背景も踏まえると行動経済学で取り組んでいる、利用者がどのようなことを感じて、どのような行動を取っているかを知ることは、人工知能を開発する上でも重要な視点になります。

人工知能の未来は、自律性を持った人工知能が鍵

コンピューターサイエンスとサイバネティクスにバックグラウンドを持つ認知科学者トム・フロース准教授は、人工生命の未来について、次のブレークスルーとなるのは、自律性を持った人工知能の登場だと発言しています。つまり、今の人工知能は、コンピュターが定義した範囲で受け取ったデータから学習をしているが、その範囲外から学習することはできません。
そうした制約から解放させることで、大きな進化を生み出してゆくことが期待されています。同時に、自律性を持った人工知能について調べてみると、AIの性能が急速に上がって、自ら進化を始めてしまいコントロールが不可能になるリスクの話が出てきます。つまり、近い未来に、人工知能は自分自身の意志を持ち、私たち人間と対立することになることも危惧されているのです。
2018年3月に他界された宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング博士は、人工知能がこのペースで進化し続けていけば、生物的進化の遅い人間は、競争する前に、人工知能に能力的に追い越されるだろうと予測しています。また、人工知能の発明は人類史上最大の出来事であるが、同時に、最後の出来事になってしまう可能性もあるとも述べています。

人工知能にも弱さや曖昧さが求められる

人工知能を使った対話では、過不足ない言葉で会話すれば、お互いのコミュニケーションが成り立つと考えられていますが、言葉に詰まったり、忘れたり、不完全な部分がある方が人の関わりをうまく成り立たせることができるのではないかとの考え方もあります。
無理に会話を予測するのではなく、わからない部分を「何だった?」と相手に助けを求めながら成り立たせてゆくような手法も研究させ始めています。そうした弱さや曖昧がある方が、人間が行なっている自然なコミュニケーションが成り立つと考えられています。
コミュニケーションは、お互いに歩み寄ることが大事なので、人工知能が自らの弱さをさらけ出すことで人の優しさや工夫を引き出させれば、より深い対話が実現できるのではないでしょうか。