人工知能（AI）は、学習により人間の知能を模倣した思考ができるのが特徴で、さまざまな分野で、より人間に近い存在として活用され始めています。しかし、人工知能は悪用されるリスクもあり、政治や社会に影響を与えるプロパガンダに活用されると、深刻な問題が生じる恐れがあります。
プロパガンダとは、特定の思想や主張を広めるために、情報を操作することで、感情に響くメッセージを活用して、人々の意見や行動を誘導し意思決定に影響を与えることで、対立や偏見を煽ったりする目的で行われます。プロパガンダは、歴史的にも戦争や革命などの社会的変動の際に多用されてきました。
人工知能をプロパガンダに使うと、その効果は飛躍的に増幅されてゆきます。人工知能は、大量のデータを容易に分析し、人間の言語や画像を高い再現性で生成する能力があります。こうした技術を活用することで、対象者に最適化されたメッセージを短期間で大量に送ることができるのです。
また、人工知能は、ディープフェイクと呼ばれる人間の目や耳で区別ができないような偽造された情報を作成することもできるようになってきています。こうした虚偽情報をSNSなどのメディアを通じて簡単に拡散させることが可能です。
人工知能でプロパガンダが加速してゆく理由は、人間の感情や嗜好に応じて最適化された情報を、真偽の区別が困難になるレベルで偽造された情報がインターネットやSNSなどのメディアを通じて迅速かつ広範囲に拡散することで、人間が判断できないような複雑な情報操作が可能になることです。
どこまでが真実で、どこまでが情報操作なのかが判断をすることが困難になってしまうのです。
人工知能で加速するプロパガンダの具体的な例
人工知能の話題で、もっとも注目されているChatGPTは、ネット上などの膨大な情報を学習し、まるで人間と対話するように会話ができることが特徴です。そのコミュニケーションが自然な感じであるため、誤った情報であっても、正しいように回答を返信してくることがあります。
また、過去にネット情報に流れていた虚偽の情報がそのまま真実であるかのように伝えられることもあります。
人工知能が自然体の高度な会話ができるようになるほど、人工知能から提供される情報の真偽を確かめることは困難になってゆくのではないでしょうか？
また、AIによる音声合成は、人間の声を真似たり、新しい声を作り出したりすることができるため、こうした技術が悪用されると、政治家や著名人などの声を使ってプロパガンダを行うことも可能になります。
政治家や著名人などの動画を、会話に合わせて、顔や表情を分析し、動画や画像を生成することもできるので、ディープフェイクと呼ばれる動画や写真を作成してプロパガンダを行うことも可能になります。
プロパガンダに対抗する方法
プロパガンダに対抗する方法は、まずプロパガンダに活用される技術を知ることです。プロパガンダは、さまざまな手法を使って人々の感情や思考を操作しようとします。個別の事例を全体に当てはめたり、都合の悪い事実を隠したり、都合の良い事実を強調したりすることで情報を操作してゆきます。そうした技術を理解することで、プロパガンダに惑わされないようになります。
プロパガンダは、一方的な視点や意見を刷り込む手法なので、同じ出来事でも、異なる立場や背景から見るように意識しておくことです。そうした視点を持つことで、異なる解釈や評価が可能になります。
プロパガンダに対抗するには、複数の情報源から情報を得て、比較検討することが重要になります。
また、プロパガンダは、人々を分断し、対立させようと情報が操作されるものなので、対抗するには、対話を促進し、相互理解を深めることが必要です。
