2023年7月14日、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)が、米ハリウッドにおいて過去43年で最大規模となるストライキを決行しました。
その影響で、最新作映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のPRで来日予定だったトム・クルーズさんの来日が中止になったこともあり、日本国内でも注目される話題となりました。
全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)は、ハリウッド最大の俳優組合で約16万人が加入しています。
ストライキの背景は俳優のデジタル肖像権を巡る問題
ストライキの背景には、人工知能による俳優のデジタル肖像権を巡る問題があります。
具体的には、俳優のパフォーマーをスキャンして、その1日の給与を支払いはするものの、そのスキャンしたデータ(イメージデータと肖像)を永遠に使用できる権利を制作会社に与える内容で契約を進めていました。
こうした人工知能を活用した俳優のデジタル肖像権の使用に対して強い拒否反応を示し、条件改善を求める動きに繋がりました。
脚本家にとっても同じような問題がストリーミング作品を中心に起こっており、作品の知的所有権や再使用料を放棄する内容の契約書を結んでしまっているケースが多い様です。
再使用料は、作品が各プラットでフォーム放映されたり、別の媒体などになったりした時に、脚本家や俳優に支払われる使用料です。脚本家や俳優業は、仕事の浮き沈みが激しいため、仕事がない時期の活動資金として重要な収入源になってくるお金です。
ヒット作品が生まれた時に、収益を正しく関係者に配分するための手段で、映画では俳優たち努力もあり、そうした権利が守られてきましたが、ストリーミング作品が増えるようになり、正しく分配がされていないケースも目立ち始めました。
そうした状況もあり、人工知能による代替やストリーミングによる影響で、俳優や脚本家の経済的な打撃が大きくなり、改善案の検討を進めているのです。
特に、ストリーミングサービスによるギャラの低下により、クリエイターの創作活動への影響についても問題視されており、エンターテインメント業界の従来のビジネスモデルの転換を真剣が考えなければならない状況になってきています。
今、ハリウッドでは、AIとストリーミングによる変化に対応し、俳優や脚本家の仕事の価値を守るための対策が求められているのです。
人工知能によって奪われる権利について考える必要性
人工知能によって奪われる仕事について、考える機会が増えてきていますが、今回のデジタル肖像権の問題は、ビジネスモデルを考え直すことがで改善できる可能性があります。
人工知能の技術を活用する場合、作業効率や収益の改善を求めることは正しい取り組みだと思います。
従来のビジネスモデルでは、良い意味で守られてきた仕組みが人工知能や新しい仕組みの影響があり崩れてしまうことがあります。
脚本家や俳優が、再使用料の条件を求めることは難しいことではないのだが、まだ売り出し中の脚本家や俳優にとっては、その要求をしたせいで、キャスティングされなくなったり、脚本の企画が却下されてしまうことを恐れて不利な条件で契約をしてしまっているケースも多くあります。
あくまで、作品を配給する側が強いので、脚本家や俳優が自分がかかわった作品がヒットしたならば、それに応じて収益を分配して欲しいと考えることは、継続的に良い作品を生み出したり、新しい才能を生み出すためには必要不可欠な条件ではないでしょうか。
Netflixをはじめとするストリーミング配信会社は、こうした問題を生み出し、改善が図られていません。
大物俳優や売れている脚本家を使うためにコストが掛かる分、安く使える脚本家や俳優を安く使おうとする姿勢が顕著にでており、業界全体の将来性に強く影響を与え始めています。もっと、広い視野で、業界のために何が最善なのかを考える時期に来ているのです。
こうした問題は、今後、人工知能が活用されていく中で、数多く出てくる問題です。
アイディアのオリジナルは誰なのか?
新しいアイディアは、既存のアイディアの要素の新しい組み合わせだとも言われている中で、新しいアイディアは、誰ものなかのか?
人工知能が生み出したアイディアは、オリジナルなのか、生み出されたアイディアの権利は誰が保有するのか?
人工知能によって奪われる権利について考える機会は増えてゆくはずですが、そうした時に、広い視野で、将来のために何が最善なのかを考える視点が大切なのです。