映画『アイの歌声を聴かせて』に、AIのイノベーションを感じた瞬間

映画『アイの歌声を聴かせて』(主演・土屋太鳳さん)は、キャラクター設定などパッと見、受け付けない人もいるかもしれませんが、それは少しもったいないです。(予告編を見ると自分が見る映画じゃないって思う人がいるかもしれません。)

ただ、AI に興味がある方には、ぜひこの映画を見てみることをお薦めしたいです。

映画『アイの歌声を聴かせて』をお薦めする理由。

今回は、ネタに係わる部分には、なるべく触れない様にまとめていますので、興味がある方は、この記事を参考にしてぜひ作品を鑑賞してみてください。(この映画は、なるべく予備知識をつけないまま作品を見た方が発見は多いと思います。)

さて、では本題に入っていこうと思います。

公式サイトによるとこの映画は、ポンコツAIとクラスメイトが織りなす、爽やかな友情と絆に包まれたエンターテインメントフィルムとのことです。

テーマは、ずばり「AI」と「人間」の関係。

視聴するにあたって、注目しておきたい一つのポイントがあります。

なぜ、AIロボットのシオンは、繰り返し主人公のサトミへ、「しあわせか?」を問い続けるのか?その部分にも注目してみてください。

人工知能が、人の幸せを願い続けたときに、人間はどのように解釈するのか?
人工知能は、命令に忠実であるとも言えます。
人工知能は、人間の予測範囲内の答えと人間の予測を遥かに超えた純粋性を持った回答を持っています。

この作品に出てくるAIは、空気を読まず、突然歌い出す、少し不完全なAI。
万能ではなく、不完全さが残っている部分が妙にリアリティがあるのです。

また、物語の舞台がAIの実験都市だという点も、こんな未来が近い将来にあるかも知れないと感じさせます。 現実感のある街の中に近未来が融合しており、現代の質感とSF要素が入り混じった都市の描写が最高に刺激されます。
この設定が、ファンタジーでありながらも、AIがこれからの時代の中でどのように進化してゆくかをリアルに感じることにつながります。

そして、物語の終盤に感じる時間の流れがとても素敵。

この映画で主人公の声優を務めている土屋太鳳さんは、インタビューで『(AIロボットのシオンは)表情はとても自然で人間らしいけれど、心の部分がまだ赤ちゃんなので、それが大人になるところを表現したかった。』と語っています。

映画『アイの歌声を聴かせて』の鑑賞ポイント

映画の鑑賞ポイントを上げておくとしたら、なぜAIはその行動を取るのか?という部分を意識しておくと、終盤がより楽しく感じられると思います。

AI が自ら考え人の幸せを願った時どんな行動するか、それがどのようにAIの成長に繋がるのか。

この物語に出てくる AI は不完全なもので、その不完全さの中から最適解を求めて動き続けることで、成長してゆきます。

ご主人となるサトミを幸せにすることだけを行動方針として活動し続ける。

AIが人と関わるとどういう変化を生み出す可能性があるのか?
その可能性を深く感じさせる部分がありました。

心を持たないはずのAIが、心持った人間以上にコミュニケーションを改善してゆく部分が深く考えさせられます。

人間とAIの関係性には、二つの側面を感じます。
AIの発展と共に、AIと共存する人と、AIを拒絶する人が生まれるのではないでしょうか。

この問題は、あくまで機械としてAIを扱う人と、AIにパートナーシップを感じる人間と意見は完全に別れるものだと思います。

また、AIが人間の制御を超えて、予測不能な思考(ブラックボックス)を持った時に、その活動を危険だと判断するのか、生み出している価値を評価するのかで、大きく変わってくるはずです。

映画『アイの歌声を聴かせて』を見ていると、AIのイノベーションを感じる瞬間がいくつかの場面で生まれてきます。そうした、ちょっと先の未来を想像させる映画だと思います。

『アイの歌声を聴かせて』がミュージカル映画である理由

余談ですが、この映画は一部ミュージカル映画のようなスタイルを取っているのですが、ちょっぴりポンコツなAIの主人公・シオンを土屋太鳳さんが演じていて楽曲も歌っています。

もうひとりのヒロインであるサトミを福原遥さん、幼馴染のトウマを工藤阿須加さんが演じ、小松未可子さん、興津和幸さん、日野聡さんといった実力派声優もキャスティングされています。AIを土屋太鳳さんが演じることで、突然歌い出す空気の読めないAIの違和感が際立つキャスティングなようにも感じます。

ミュージカル映画で感じる「なぜここで歌う?」という違和感を急に歌い出すポンコツAIにすることで、物語の不自然さをなくしている点と、AIは進化してもちょっとした不自然さから、AIが人間とは違うとわかってしまう部分を表現している点にも注目しています。

結論として、歌って踊る楽しい映画でハートフルな話なので、とってもお薦めです。