ビックデータと人工知能から仮説は導き出せない

現実の世界は、リアルな世界に、デジタルのものが混在する世界へと移行しはじめています。
さまざまな接点でデータが蓄積され続けて処理できないほど膨大なデータが集積され続けています。
そうしたビックデータを使ったデジタルマーケティングの領域も人工知能の活用が進んでおり、新しい付加価値を生み出し始めていますが、ビックデータの分析が自動化されたとしても、人間がデータに付加価値のある要素を加えなければ、質の高いアウトプットを生み出すことは難しいものです。
例えば、商品をレコメンドする機能に人工知能を活用することを検討する場合、ビックデータと人工知能から、これまでにない新しい消費者ニーズを見つけ出しすることは難しいことを理解しておく必要があります。
購買データを大量に集め、AIで分析したとしても、買い手の心理を読み、仮説を立てることはできないからです。
そうした部分は、人間が先入観や固定観念を捨て、顧客視点になりきり考えることが求められています。

顧客の潜在ニーズをビックデータの解析からは導き出すことが難しい理由

顧客の潜在ニーズをビックデータの解析からは導き出すことが難しい理由は、人工知能が集積したデータの中から与えられた条件で、特定のパターンを導き出すことを得意としており、そこから導き出される答えは、過去データの購買傾向などに基づいたデータとなってしまうからです。
データ分析をする際、そのデータから読み取れる範囲を超えどのような結果を想像をするか、過去の延長線上ではない未来を見出してゆく部分は、人間が仮説力を発揮する部分になります。
こうした仮説を導く力は人工知能には備わっていません。
しっかりとした仮説がないと、データ量が多過ぎて人工知能が情報を上手く処理することができず、本当に見つけたい答えに辿り着かなくなってしまうことがあります。
一方で、人間の脳は、感覚的にわかっていることは、目に見えないデータも含めて情報処理をしていると言われています。
人間の頭で考えた発想は、こうした説明できない能力も備わっている部分があり、意外と当たるものなのです。
対して、人工知能は、人間よりも遥かに高い正確さで、推測を必要とせずに、関連するデータとそうでないものを判断することができます。膨大なデータを高速に処理し、パターンを見つけ、示唆を出すことが得意な領域なのです。
ビックデータと人工知能について考える上で、分析思考と仮説思考について考えてみる。
ビックデータと人工知能について考える上で、分析思考と仮説思考について、その違いを理解しておく必要があります。
分析思考とは、課題に関連する定量的・定性的な情報を集め、それを集計の上、分析することで新たな発想を得て、課題に対する答えを導き出す取り組みです。
もう一つの仮説思考は、課題に対して最初に仮説を立て、その後にその正しさを検証するための裏付けを取り、仮説の正確性を判断します。ビッグデータを上手く活用して、自分たちの感覚を確かめる裏付けをとってゆく作業になります。
人間は、限られたリソースの中でできる限り早く答えを探し出すために、分析思考よりも仮説思考を上手く活用して課題を解決してゆきます。
対して、分析思考的プロセスは、膨大なデータを分析する労力がかかるので、人間よりも人工知能が力を発揮する領域になります。この領域は、対象データから特徴やパターンの示唆を出すことを得意とする人工知能を活用するべきです。
人工知能の能力を引き出すために、人間は、仮説思考を最大限活用し、検証すべき仮説の精度を高め、最適な分析思考のプロセス設計を行うべきです
つまり、人間の考えた仮説があり、その仮説を検証するためのビッグデータがあることが理想的な状態なのです。

人工知能に、仮説的推論(アブダクション)は可能なのか?

仮説的推論とは、結果や結論を説明するための仮説を生み出すことですが、人工知能は、飛躍的な仮説をすることは難しいと言われています。
その理由は、人間が直感的に発想を得るメカニズムが解明されていないからです。
なぜ、その発想ができるのかが判明していないので、再現することが難しいのです。
人工知能の研究の中には、人間の脳そのものを人工的につくってしまおうという研究に取り組んでいる活動もあることや、ディープラーニングにようなイノベーションが起こることもあるため、突然、仮説的推論(アブダクション)が可能になることがあるかもしれません。
それまでは、人間の仮説を生み出す力が大きな影響力を持つことを理解しておくことが大切です。